親の物忘れが増えてきました。年齢的なものか、受診したほうがよいか迷っています

A. 回答

物忘れには、加齢に伴う自然な変化と、何らかの病気が背景にあるものがあり、ご家族が日常の様子だけで見分けるのは難しいとされています。大切なのは、「認知症かどうか」を先に決めつけないことです。物忘れや意欲の低下の背景には、甲状腺の機能低下、ビタミンの不足、脱水、お薬の影響、うつ状態など、治療によって改善が期待できる原因が隠れていることがあると指摘されており、まずは身体の状態を確認することが第一歩と考えられています。ご本人を傷つけずに受診につなげる方法もありますので、迷われている段階で、どうぞかかりつけ医にご相談ください。

加齢による物忘れと、心配な物忘れの違い

年齢を重ねると、名前が出てこない、置き場所を忘れるといったことは誰にでも起こります。一般に、加齢による物忘れは「体験の一部を思い出しにくい」のに対し、病気が背景にある物忘れは「体験そのものが抜け落ちる」傾向があるとされています。よく挙げられる違いを整理すると、次のようになります。

項目加齢による物忘れ受診を検討したい物忘れ
忘れ方食べたメニューを思い出せない食べたこと自体を忘れている
範囲体験の一部(名前・置き場所など)体験の全体がすっぽり抜ける
ヒント言われれば「そうだった」と思い出せるヒントがあっても思い出しにくい
自覚忘れっぽくなったと本人が気にしている忘れている自覚が乏しくなることがある
進み方年単位でごく緩やか数か月〜1年ではっきり目立ってきた
日常生活ひとりで支障なく送れている金銭管理・服薬・調理・外出などに支障が出てきた
時間・場所日付をうっかり間違える程度今の季節や日付、慣れた道が分からなくなる

ただし、この表はあくまで一般的な傾向であり、当てはまるからといって認知症と決まるわけではありません。反対に、初期には周囲が気づきにくいこともあります。「気になる」と感じた時点でご相談いただくのが、いちばん確かな方法です。

治療できる原因が隠れていることがあります

物忘れや、ぼんやりする・意欲が出ないといった変化の背景に、身体の病気や環境の影響が関わっている場合があります。原因に応じた治療や対応によって改善が期待できるものもあるとされ、こうした状態は医学的にも重視されています。次のようなものが挙げられます。

こうした原因の多くは、血液検査や問診といった身体面の確認から手がかりが得られます。「まず内科で身体を診てもらう」ことが、遠回りではなく近道になるとお考えください。

ご家庭で気づきやすい変化のチェック

ご家族が最初に気づくのは、記憶よりも「生活のしかたの変化」であることが少なくありません。当てはまるものがないか確認してみてください。

こんな変化はありませんか?

  • 同じことを何度も聞く、同じ話を繰り返す
  • 財布や通帳、鍵をよく探している。「盗られた」と言うことがある
  • お薬の飲み忘れ・飲み過ぎが増えた(残薬がたまっている)
  • 冷蔵庫に同じ食品がいくつも入っている、傷んだ物が残っている
  • 料理の味つけや手順が変わった、火の消し忘れがあった
  • 身だしなみや入浴、部屋の片づけに無頓着になった
  • 公共料金や税金の払い忘れ、不要な契約・買い物が増えた
  • 外出や趣味、人付き合いを面倒がるようになった
  • 日付や曜日、今の季節があいまいになることがある
  • 怒りっぽくなった、逆に感情の起伏が乏しくなった

いくつ当てはまれば病気、という基準ではありません。ただ、これまでのご本人と比べて明らかに変わったと感じる項目があれば、ご相談のきっかけとしてお使いください。「いつごろから」を思い出しておくと、診察の場でとても役立ちます。

受診の目安

物忘れそのものは急を要さないことが多いのですが、次のような場合は対応を急ぐ必要があるとされています。

すぐに受診を検討してください

  • 数日以内に急に、受け答えがおかしくなった・ぼんやりして眠りがちになった
  • 発熱、脱水、下痢・嘔吐などの体調不良に伴って、急に様子が変わった
  • 頭を打ったあとに、頭痛・吐き気・歩きにくさ・物忘れが出てきた、または日を追って強くなっている
  • 急に手足に力が入らない、しびれる、ろれつが回らない、言葉が出にくい
  • 見えないものが見える、強い興奮や混乱があり、ご本人やご家族の安全が保てない
  • 火の不始末、車の運転中のヒヤリ、外出して帰れなくなるなど、事故につながりかねない出来事があった

早めの受診をおすすめします

  • この半年〜1年で、物忘れが以前よりはっきり目立ってきた
  • 同じことを何度も聞く、置き忘れ・探し物が増えた
  • 服薬・金銭管理・調理・買い物など、これまでできていたことに支障が出てきた
  • 日付や場所が分からなくなることがある
  • 気力が落ちて、外出や趣味をしなくなった
  • 食事量が減った、体重が落ちてきた
  • 新しいお薬を飲み始めてから、ぼんやりすることが増えた
  • ご家族が「どこに相談すればよいか分からない」と困っている

本人を傷つけずに受診につなげる、きっかけの作り方

ご家族にとっていちばん難しいのが、この部分だと思います。「認知症かもしれないから病院へ行こう」と正面から伝えると、ご本人の自尊心を傷つけ、かえって受診が遠のいてしまうことがあります。実際には、物忘れを主題にしない受診から始めるほうがうまくいくことが多いとされています。

なお、どうしても受診が難しい場合、市町村の地域包括支援センターにご相談いただく方法もあります。ご家族からの相談を受けて専門職がご自宅を訪問し、医療や介護につなぐ仕組み(認知症初期集中支援チーム)が各市町村に設けられています。倉敷市にお住まいの方も、お住まいの地域を担当するセンターにご相談いただけます。

何科に相談すればよいか/当院での対応

「物忘れは何科か」というご質問をよくいただきます。もの忘れ外来や脳神経内科・精神科といった専門外来もありますが、厚生労働省も、まずは日ごろ受診しているかかりつけ医への相談から始めることを案内しています。かかりつけ医であれば、これまでの経過やお薬の内容を踏まえて全身の状態を確認でき、必要な場合に専門医療機関へつなぐ役割を担えるためです。

当院は内科のかかりつけ医として、ご家族の物忘れのご相談をお受けしています。まずは問診でご本人・ご家族から経過をうかがい、血液検査で貧血、甲状腺の機能、肝臓・腎臓のはたらき、電解質、血糖、ビタミンの状態などを確認します。あわせて、服用中のお薬の影響、脱水、気分の落ち込みといった要因がないかを含めて、身体面から丁寧に確認していきます。そのうえで、さらに詳しい評価や頭部の画像検査が必要と判断される場合には、専門の医療機関をご紹介します。当院で診断名を急いでつけることが目的ではなく、まず「治せる原因を見落とさないこと」と「必要な支援につなぐこと」を大切にしています。

また当院は複合介護施設を併設しており、デイサービス・小規模多機能ホーム・訪問介護・居宅介護支援センター・サービス付高齢者向け住宅「メディケアビレッジかしわじま」を運営しています。「介護保険の申請はどうすればよいか」「日中ひとりで過ごすのが心配」「家族だけで支えるのが不安」といった介護のご相談にも、施設の相談員(ケアマネジャー)とともに対応できます。通院が難しくなった場合には訪問診療・訪問看護もご用意しています。医療と介護の窓口が一つになっている点は、長く支えていくうえで安心していただける部分かと思います。

受診にあたって

受診時に伝えていただきたいこと

本ページは一般的な情報提供を目的としています。症状の程度や経過には個人差があり、緊急性が高いと感じる場合は救急外来の受診もご検討ください。ご不明な点はお電話(086-525-0600)にてお問い合わせください。

「年齢のせいかもしれない」と迷っている段階で構いません。ご家族だけのご相談もお受けしています。まずはお気軽にお電話ください。

📞 086-525-0600
医療法人 いなだ医院 倉敷市玉島柏島で、内科・呼吸器内科・循環器内科・感染症内科・アレルギー科・消化器内科(胃腸科)・小児科・リハビリテーション科を診療しています。本記事は公的機関・学会の資料をもとに作成し、当院の医師が内容を確認しています(2026年8月確認)。

最終更新:2026年8月26日

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