健診で肝機能の数値が高いと言われました。お酒はあまり飲まないのですが、なぜでしょうか?
A. 回答AST・ALT・γ-GTPは「肝臓の細胞が傷んでいないか」「胆汁の流れが滞っていないか」を映す血液検査の項目で、お酒をほとんど飲まない方でも高くなることがあります。近年とくに多いとされるのが、体重・血糖・脂質・血圧などの代謝の乱れを背景に肝臓へ脂肪がたまる脂肪肝で、2024年に日本消化器病学会・日本肝臓学会が「代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD/マスルド)」という日本語病名を公表しています。ほかにB型・C型の肝炎ウイルス、薬やサプリメントの影響などが隠れている場合もあります。肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ自覚症状が出にくいため、指摘されたまま様子を見るのではなく、原因を調べておくことがすすめられています。
AST・ALT・γ-GTPは何を見ている検査?
3つはよく並んで記載されますが、映しているものが少しずつ違うとされています。1つだけ高いのか、複数が同時に高いのかで、考えられる背景も変わってきます。
| 項目 | AST(GOT) | ALT(GPT) | γ-GTP |
|---|---|---|---|
| 主にある場所 | 肝臓のほか、心臓・筋肉・赤血球にも含まれる | ほとんどが肝臓の細胞に含まれる | 肝臓の胆管系や胆汁の通り道に多い |
| 高いときに反映するとされること | 肝細胞の障害。ただし激しい運動や筋肉の障害でも上がることがある | 肝細胞の障害をより特異的に反映するとされる | 胆汁の流れの滞り、アルコールや薬の影響、脂肪肝 |
| あわせて見る項目 | ALP・総ビリルビン・血小板数、血糖やHbA1c、コレステロール・中性脂肪など | ALP・総ビリルビン、飲酒歴 | |
日本肝臓学会は「奈良宣言2023」として、健診でALTが30を超えていた場合はまずかかりつけ医を受診し、原因を調べることをすすめています。基準値の表記は健診機関によって異なるため、お手元の結果用紙をそのままお持ちください。
お酒を飲まない人で考えられる主な原因
「飲まないのに肝機能が高い」というご相談は少なくありません。一般的には次のような背景が挙げられています。
- 脂肪肝(MASLD/代謝機能障害関連脂肪性肝疾患):肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などの代謝の乱れを背景に、肝臓に中性脂肪がたまった状態。飲酒習慣がなくても起こり、日本人成人にも広くみられるとされています。体重がそれほど多くない方でも認めることがあります。
- B型・C型のウイルス性肝炎:国内では肝硬変や肝がんの大きな要因とされてきました。感染していても長く症状が出ないことがあるため、肝機能異常を指摘された際に一度は確認しておくことがすすめられています。
- 薬やサプリメント、健康食品の影響:治療のためのお薬のほか、市販薬・漢方・サプリメントが関係する肝障害が起こる場合があります。
- 胆石や胆道の病気:胆汁の流れが妨げられ、γ-GTPやALPが上がることがあります。
- 自己免疫性の肝疾患・甲状腺の病気など:頻度は多くありませんが、血液検査で調べられる原因として挙げられます。
- 一時的な要因:検査直前の激しい運動や、体調の変化で数値が動くこともあります。
こんな項目に当てはまりませんか?
- ここ数年で体重が増えた、おなか周りが大きくなった
- 健診で血糖・HbA1c・中性脂肪・血圧も指摘されている
- 過去にも肝機能の数値を指摘されたが、そのままにしている
- 肝炎ウイルス検査を受けたことがない、または受けたか覚えていない
- 常用しているお薬・サプリメント・健康食品がある
- ご家族に肝臓の病気の方がいる
受診の目安
肝機能の異常は自覚症状が乏しいことが多く、数値だけでは緊急性を判断しにくいのが特徴です。次のようなサインがある場合は早めにご相談ください。
すぐに受診を検討してください
- 白目や皮膚が黄色くなってきた(黄疸)
- 尿の色が濃い紅茶のようになった、便が白っぽい
- 強いだるさ・食欲低下・吐き気が続き、日常生活に支障がある
- 右のわき腹や上腹部の痛み、発熱をともなう
- 足のむくみやおなかの張りが急に強くなった
- 新しく飲み始めた薬やサプリメントの後に数値が大きく上がった
早めの受診をおすすめします
- 健診でAST・ALT・γ-GTPのいずれかが基準値を超えていた(症状がなくても)
- ALTが30を超えていると指摘された
- 「要精密検査」「要医療」と判定された
- 毎年のように肝機能を指摘され続けている
- 腹部超音波で脂肪肝を指摘されたことがある
- 肝炎ウイルス検査を一度も受けたことがない
当院での対応と検査の流れ
いなだ医院は内科・消化器内科(胃腸科)を標榜し、C型肝炎・B型肝炎の診療も行っています。健診結果をお持ちいただければ、まずは問診で飲酒歴・体重の変化・服用中のお薬やサプリメント・ご家族の病歴などをうかがい、必要に応じて次のように進めます。
- 血液検査:AST・ALT・γ-GTPの再確認に加え、ALP・ビリルビン・血小板数、B型・C型の肝炎ウイルス、血糖・HbA1c・脂質などをあわせて調べます。
- 腹部超音波検査(エコー):脂肪肝の有無や肝臓の形、胆石・胆道の状態などを痛みなく確認できます。
- 生活面のご相談:脂肪肝が背景にある場合は、体重・食事・運動・睡眠などの調整が土台になるとされています。糖尿病や脂質異常症をお持ちの方は、そちらの管理とあわせて経過を見ていきます。
- 専門医療機関との連携:精密検査や専門的な治療が必要と判断した場合は、適切な医療機関をご紹介します。
肝臓は再生する力を持つ臓器とされる一方、炎症が長く続くと線維化が進むことがあります。数値が少し高いだけでも、原因を確かめて経過を見ておくことに意味があります。
受診の準備・費用など
- 予約:当日受診が可能です。朝7時から診療しており、お仕事前の受診にもご利用いただけます。
- お持ちいただくもの:健康保険証(マイナ保険証)、健診結果の用紙、お薬手帳。市販薬・サプリメント・健康食品は名前がわかるもの(現物や写真)をお持ちください。
- 所要時間の目安:診察と採血で15〜30分程度、腹部超音波検査は15分前後が目安です(混雑状況により前後します)。
- 絶食について:腹部超音波検査は、食事の影響を避けるため空腹で受けていただくことがあります。当日にご希望の場合は、朝食を控えてお越しいただくか、事前にお電話でご確認ください。
- 費用:健診異常の精査として行う診察・血液検査・腹部超音波検査は保険診療の対象となります。金額は検査項目や自己負担割合により異なりますので、詳しくはお問い合わせください。
受診時に伝えていただきたいこと
- いつから、どのくらいの値を指摘されているか(過去の健診結果があると比較できます)
- お酒の量と頻度(飲まない場合はその旨も)
- ここ1〜2年の体重の変化
- 服用中のお薬・サプリメント・健康食品
- だるさ・食欲・尿や便の色など、気になる変化があるか
- これまでに受けた肝炎ウイルス検査や腹部エコーの結果
参考にした情報
健診結果の用紙をお持ちのうえ、お気軽にご相談ください。当日受診も可能です。
📞 086-525-0600最終更新:2026年8月26日
